奥から出て来たのは、制服から着替えたくゆりさん。

 正直、僕は見とれていた。

 膝が隠れる丈の紺色のワンピースに薄手のカーディガンを羽織った彼女は、ちょこんと首を傾げながら僕を見つめている。さっきまで結わえていた髪は下ろされていて、肩口からさら、とこぼれた。

「お待たせ」

 小ぶりの鞄を提げたくゆりさんはぱたぱたと駆けて来た。そのようすはまるで小動物かなにかみたいだった。

「湊くん、行こっ!」
「うえ、あ、はいっ」

 くゆりさんは僕の腕をぐいと引き、

「お疲れさまでした~」

 僕は彼女に半ば引きずられるように店を後にした。



―――20071119 / つづく