「くぅちゃん。お客さんもうみえんから、あがっていいよぉ」

 やすりやガーゼを整理していた彼女に突然、メグミさんは言った。その表情はどこか意味深だ。

「はぁい、ありがとうございます!」

 にこやかに返事をしたくゆりさんは、かごを持ったまま奥へ行ってしまった。

 初対面の彼女――メグミさんの観察するような眼差しと沈黙が、痛い。

 不意に、彼女はにっこりと笑んで、僕の名前を呼んだ。

「くぅちゃんは手強いに、頑張りゃぁよ?」

 どういう意味なんだろう、と瞬きを繰り返していると、

「お待たせ、湊くん」