「そういえばあんた、それどうしたのよ」

 興奮の向こう側に行っていた姉さんがいつの間にか帰って来たらしく、僕の左手の手提げを指差して言った。

「そのトート、先月のC3(シーキューブ)のおまけでしょ?」

 C3は姉さん愛読のファッション雑誌だ。そういえば、少し前姉さんが同じものを持っていたのを見たような気がする。

「これは――……」

 話は長くなるんだけど、と前置きをして、ことの次第を出来るだけわかりやすく説明した。

 上から降って来た水を被ってしまったこと。水の落とし主があのNANAさんだってこと。彼女と仲良くなったこと――たぶん仲良くなったと思う。……思いたい――。今度また逢う約束をしたこと。