今まで何度となくプロレス技を掛けられてきたけれど――サソリ固めやバックドロップ、シャイニング・ウィザード……数え出したらキリがない――、今回ばかりは本当に死ぬかと思った。姉さんは女の人にしては大柄で、身長も僕とほとんど違わない。だけどやっぱり、一応“女性”なわけで。一体あの怪力はどこからやって来るのだろう……。

「で、ちゃんと買って来てくれたの?」
「う、うん、一応……」

 僕は鞄の中から頼まれていたものを取り出す。

 まずは、姉さんが贔屓にしている和菓子屋の金平糖。和紙のような袋から透けて見える、色とりどりの粒が星みたいで可愛らしい。もしかしたら、姉さんの女性らしいところは金平糖が好きなところくらいじゃないだろうか。

 金平糖を手渡すと、姉さんは大事そうにテーブルの上に置いた。

 『で?』、と、次を急かす視線が痛い。

 僕はもうひとつの“頼まれもの”に手を伸ばす。

 大型レンタル店の販売コーナーの、黄色いビニール袋。それがちらっと鞄の口から覗いた瞬間、ものすごい勢いで引ったくられた。勿論、姉さんに。

「……」

 姉さんは両手でそれを鷲掴みにして、ぷるぷると震えている。ごくり、と生唾を飲んだのが聞こえた。それぐらい、興奮しているらしい。

 姉さんは袋の口を留めてあるテープを慎重に剥がし、ゆっくりと中身を取り出す。黒っぽいプラスチックが顔を覗かせた瞬間、