僕は、モデルのNANAではなく、森園くゆりというひとりの生身の人間を知った。
本当の自分を晒せない。虚勢を張ることでしか自分を保てない。そんな……十九歳の、女の子。
そして――――初めて、僕を受け入れてくれたひと。
『また、逢いたいから……っ!』
思わず、言ってしまった。その時のことを思い出して、また顔が熱を帯びていく。
僕は次逢う時の口実、くゆりさんのシャツの入った手提げを見やる。
(また……彼女に、逢える)
ふっと、口元が緩んだ。
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