なんとか掴んだじょうろを適当に机の上に置いて、あたしは部屋を飛び出した。

 廊下の突き当たりにあるお風呂場から目についたタオルを抱えて、階段を駆け降りて。普段はあまり履かない下駄に足を突っ込んで、彼に駆け寄ったあたし。

 あたしよりも頭ひとつ分背の高い彼は、とっても綺麗な目をしてた。

 黒。

 真っ黒。

 吸い込まれそうな漆黒。

 長い前髪から覗くその目にまっすぐ見つめられて、柄にもなく照れてしまう。あたしは目を反らして、彼の濡れた胸元を拭いた。