二枚目の分厚いガラスの扉を押し開けたところで、湊くんはやっと口を開いた。

「……くゆりさん、ここ……」
「さて、ここは何処でしょう?」

 困った顔をした彼が可愛くて、ついつい意地悪してしまう。ふふ、と笑うと彼は赤くなった。

 湊くんの手を引いて、少し急ぎ足。

 通路の脇には棚がずらっと並べられていて、ドライフラワーとか和紙とかビーズとか、いろんな品物が陳列されている。もう少し奥には、洋裁にも使える布も置いてある。

「手芸品屋さん、ですか?」
「正解。だけど不正解」

 全然わからないといった風に彼は小さく唸った。