【完】相沢くんの秘密。



理解出来ず、呆然と相沢くんに掴まれた手首を見ていると、上から今まで聞いたことのない低い声が降ってきた。


「…誰、あいつら。」

「え、えっと知らない人、です…いきなり来て…」

「何かされた?」

「特に…腕を引っ張られる以外は何もされてないです…」


いつもと違う相沢くんにびっくりして、意味もなく敬語を使ってしまう。

おどおどしながら見上げると、ぐっと見つめてくる相沢くんの瞳に捕まった。

黒く綺麗で鋭く捕まったら逃げられない、瞳。


「…よかった…」

「…へ?!」


唾液が音を鳴らして喉を通り、何か言われる覚悟を決めたら、まさかの安堵の声。

いつものトーンより、心配味を含んだ声色が私の脳にぐらぐらと響く。