約1時間程の作業だったのに、あのカップルのせいで時間が長く感じた。
私は、作業をしながらもこまめに時計を確認していた。
借り物競走の小物の準備は、ほとんど私がしていた。
あの2人は、カードを1時間で2枚ほどしか作っていない。
というか...
キスする元気があるのなら、体育に参加しろ
と何度もそう思っていた。
先生は、カップル2人ともが体育を見学することについて疑問を持たなかったのだろうか...不思議だ。
私は、これらの出来事をさっそく
るると星莉ちゃんに話した。
話すと、2人ともえーーっと言う声を上げ、
一斉に
「気持ち悪いよね〜」
と言った。
悪口を言っているのと同じことだから、
あまり言ってはいけないのかもしれないけれど、この嫌な事を誰かに話して、誰かに同情して欲しいと思う自分がいた。
星莉ちゃんは、まだ体調が優れない私に抱きついて言った。
「望和ちゃん...
よくその空気の中、耐えれたね!!
んーっ、偉い!!」
「あっ、ありがとう星莉ちゃん...。
でも、私、体調崩していて風邪気味だし...
そんなに近づいたら風邪うつっちゃうよ」
「いいよ、うつして」
そう言う星莉ちゃんに、るるが
いや、うつったらダメだろうと言うツッコミを入れる。
やっぱり友達といると、嫌な事だって忘れることができる。
よし!
あのカップルなんかに負けないぞ!!
2学期も、乗り越えて行くぞ。
そう決意した後、私達3人は髪型を整えるために、学校の2年生教室の近くにあるトイレに入った。
「あーあっ!!髪型めっちゃ崩れてるじゃ〜ん」
と、ガクッと肩を落としながら、るるはそういいながら髪型を整える。
私達以外にも、鏡の前には結構な数の女子が集まっていた。
トイレに行きたかった私は、星莉ちゃんとるるにトイレ行ってくるねと言うと、私はトイレの個室に入った。
その時だった。
鏡の前にいる女子達が何か話し始めた。
「そういえばさぁー、
1組の佐々木唯と、1組のビッチ女王がね
C公園のトイレでヤってたらしいよ〜」
...え?ビッチ女王...?
「えっ?!まじ〜?やばくね?
そのビッチ女王ってエリカのことだよね〜?」
「ビッチ女王って言ったらさ、エリカしかいないじゃん(笑)」
...え?!
エリカちゃんと唯くん、もうそんなことまでしてるの?!
...あの2人、まだ付き合って確か5ヶ月だよね?
は、早い...。
もしかして、それが当たり前なのかな...。
恐ろしい。
そう思っていると、更に衝撃的な言葉を耳にした。
「そういえば、
これはウチにエリカが自慢話として言ってきた事なんだけど〜、付き合ってもうその日にエリカからディープキスしたらしいよ〜」
「あっ、私にはね〜
『付き合って3週間目でやっと、エリカの家で唯とエッチできたぁ〜』とかなんか、自慢してきた!!」
つ...付き合って3週間目で?!
話が刺激的すぎて、
なかなかトイレの個室から出ることができなかったが、星莉ちゃんとるるを待たせてはいけないと思いトイレの個室を出た。
刺激的な話に、顔が火照っていた。
顔の熱が冷めないまま手を洗っていると、
さっき唯くんとエリカちゃんについての話をしていた女子に話しかけられた。
トイレの端にいた、星莉ちゃんとるるは、私を心配そうな目で見てきた。
同じクラスだが、あまり話したことのない女子だった為、表情が強ばってしまった。
「そういえば...石井ちゃんって、佐々木唯と付き合っていたよね...?」
石井ちゃんとは、私のことだ。
私は戸惑いながらも答えた。
「うっ、うん!!つ、付き合っていたよ〜!」
「だよね!!
も〜、石井ちゃんのほうが絶対、佐々木とお似合いだったよ!!」
え?!
...私と唯くんが付き合っていたこと色んな人にバレてたんだ...。
どうやって広まったのか分からないけれど、誰と誰が付き合っているっていうのはすぐ広まるからなぁ...。
「いっ、いやぁ...
そんな事ないよ...。」
戸惑っている私を助けるかのように、予鈴がなる。
キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーン...
この予鈴と共に、急いで教室へ戻った。


