放課後。



帰ろうと思い、靴箱へ向かっていると誰かから肩を叩かれた。




────トントンっ。





「はいっ?」



振り返るとそこには、唯くんがいた。



黒髪の唯くんと、面と向かったのは久しぶりだ。




...でも、唯くんは元カレ。


あくまで元カレなんだから関係ない。



関係ないって思っていたはずなのに、私はいつの間にか唯くんと一緒に帰っていた。




...ああ、早く家に着かないかな...。


さっきから無言のままで、なんだかソワソワして落ち着かない。





「...ねえ」



「な、なんですか?!」




「...エリカと付き合ってさ、俺気づいたんだよね」




「.....へ?」




「やっぱり望和じゃないとだめだなって。」



唯くんの手が私の右手に触れる。



「でも、エリカちゃんと唯くんはあんなにラブラブだったの.....にっ...」




言っている途中で、唯くんが私の腕をぐっと引っ張り込んだ。




私は、引っ張りこまれた衝撃で、思わず唯くんに抱き着いた。



「...ひゃっ?!」



────ポンポン




唯くんに、抱き返された...。


それに、頭ポンポンまで────。





唯くんって、前はこんな大胆なことをするような男子じゃなかったのに。




「...やっぱり唯くん変わったね」




「...え?」




「なんか、エリカちゃんと付き合ったから、大胆になったんだね。」





「...はぁ。
エリカの話をもうしないでくれる?」




────ぐっ...。




私を抱きしめる唯くんの力が強くなった。



「...なっ、あんなにラブラブだったじゃん...」




「...そんなこと、もう忘れた。」




「...忘れた...?」




信じられない。

あんなにラブラブだったのに、別れるってことあるんだなぁ。



私、てっきりあの調子じゃ本当に2人とも結婚するのかと思っていたからだ。





「...俺達が付き合っていた時、望和には迷惑かけたよね...。ごめん。」



急に優しい口調になる唯くん。


────そのまま、唯くんの唇が私の顔に近づいてくる...。




もしかして、唯くん...
私にキスしようとしている...?



考える間もなく、唯くんの唇が近づいてくる。


唯くんの薄い上品な唇が、私の唇に触れた。



...初めての唯くんとのキス。



唯くんの優しい吐息と、優しい唇。



さっきまで、唯くんに警戒心をもっていたのに...。


警戒心が、嘘のように溶けていく。



やっぱり私...唯くんのことが今でも好きなんだ。


別れた後も、実はずっと...私は唯くんのことが好きだったんだ...。




「ごっ、ごめん。泣かせるつもりはなかったんだよ?」



「...え?私、泣いてる...?」




「いきなりキスして...ごめんな。」



また、頭に温かい手の感触がする。



「...本当にびっくりしたんだから。」



「やっぱり俺、望和が好き...」



「...唯くん...」



エリカちゃんと唯くんがラブラブすぎて、私には入る隙がないと思っていた。



それに、私も人の目ばかり気にしていた...。



友達にどう思われているのがこわくて、避けることも多かった。




...だけれど、このまま唯くんとまた、やり直してもいい気がしてきた。