「そっか。ファイティン。」

頑張れ、という言葉が嫌いな彼氏を応援する時は代わりにこの言葉を言う。

意味は大して変わんないけど。こっちの方がまだいいからそうして、と以前に頼まれた。

『うん、君の胸がもう少し大きくなったら俺もやる気出るんやけどな』



別に怒らない。傷つきもしない。嘘。傷ついてる。

私が彼氏を好きになったのは中学時代だったけれど、当時はこんなことを言う人じゃなかった。

高校生になってからというものの、彼氏は私の貧乳をとにかくいじり倒すようになったのだ。

「うーごめんなさい。」

『ほんまに。2年後美人になっとけよ。あと歯の矯正。目も大きくしとくこと。』

2年後、というのはつまり、大学生になるまでに、ということだ。

「うーはい。」

言われ慣れてる。だから当たり障りなく返信する。

大好きだから。貴方のことが。ブスでごめんね。貧乳でごめんね。

ちゃんと綺麗になるから。胸も大きくするから。歯医者さんもちゃんと行くし、アイプチ頑張って目も1重から2重にするから。

…胸がズキズキする。

_____私が彼氏との別れを決意したのはここから数秒後のことだった。