「小春ちゃん、終わった?」

声をかけてきた朝比奈さんに、
「もう少しです」

あたしは荷造りをしながら返事をした。

結婚式を無事に挙げて、それを機に仕事を退職した。

今は朝比奈さんの両親が用意してくれた新居へ引っ越すための準備に追われていた。

このマンションをあたしたちは出て、今度は新居に住むんだな。

ここへきてから、本当にいろいろなことがあったな…。

突然の結婚に戸惑って、ケンカをして、気持ちを伝えて結ばれて…我ながら、どれから語ればいいのかわからない。

いろいろとあり過ぎる思い出に浸っていたら、
「小春ちゃん」

朝比奈さんがあたしの隣にきていた。

「何ですか?」

あたしが聞いたら、
「ハグしてもいいかな?」

朝比奈さんが言った。