「が、我慢って何ですか?

何の話をしているんですか?」

「えっ、わかって言ってるの?」

「だから何がですか?」

全くと言っていいほどに話が噛みあわない。

「――小春ちゃん…」

朝比奈さんが呟くようにあたしの名前を呼んだかと思ったら、
「――ッ…」

彼の唇があたしの唇に重なった。

キスは3回目だった。

2回目は今日の結婚式での誓いのキス、1回目はあたしの社内旅行先と彼の出張先が一緒になった『花萌』でだ。

――ああ、そう言うことなのね…

朝比奈さんのキスで、あたしは全てを理解した。

彼の唇が離れた瞬間、
「いいですよ」

あたしは言った。

「我慢していた分の埋めあわせをしてください」

そう言ったあたしに、朝比奈さんは驚いたと言うように目を見開いた。