朝比奈さんは呼べ呼べとうるさい。

あたしが朝比奈さんのことを名前で呼ばない限り、彼は絶対に引き下がらないだろう。

部屋は灯りが消されて真っ暗になっている。

つまり、あたしの顔を彼に見られると言うことはない。

でも…何だか変な感じだ。

今の今まで名字で呼んでいた人を名前で呼ぶなんて、おかしな話である。

「小春ちゃん?」

朝比奈さんがあたしの名前を呼んだので、
「――欣一さん…」

あたしは彼の名前を呼んだ。

「えっ、ウソ…」

朝比奈さんはどんな顔をしているのだろうか?

真っ暗なせいでそれを見ることができないと言うのは残念だ。

「欣一さん」

もう1度、あたしは彼の名前を呼んだ。

そしたら、
「フフッ…」

彼の笑った声が聞こえた。