「じゃあ、明日の分の前払いで」

「いい加減にしてください!」

離れようとしない朝比奈さんに腹が立って、あたしは彼のすねを蹴りあげた。

「イテテ…!」

朝比奈さんはようやくあたしから離れると、その場にうずくまって蹴られたすねをさすった。

「もう寝ますから」

そう言って自室へと向かおうとしたあたしに、
「ああ、待って」

朝比奈さんが呼び止めてきた。

「何ですか、ハグはもう勘弁ですよ。

そのうち、制度自体も廃止しますから」

「廃止は困るな…いやいや、そんなことを話したいんじゃなくて」

朝比奈さんは立ちあがると、
「明日のデートのことなんだけど」
と、話を切り出した。

ああ、いよいよ明日か。

そう言えば、映画を一緒に見たいと言われていたことを思い出した。