バタンとドアを閉めたのと同時に、あたしは息を吐いた。

何なんだろう、この気持ちは…。

朝比奈さんに抱きしめられた時、心臓がドキッ…と鳴った。

離れてしまったら、名残惜しいと思ってしまった。

それどころか、もっと彼と抱きあっていたいと思ってしまった。

一体、あたしの中で何が起こっていると言うのだろうか?

「――も、もう寝よう…」

明日は仕事だ。

ベッドの中に潜り込むと、目を閉じた。

だけど、すぐに眠ることができなくて目を開けた。

朝比奈さんの体温と抱きしめられた時の感触が、あたしの躰に残ってる…。

たった10秒だけの出来事のはずなのに、それがまだ続いているような気がして仕方がない。

考えるな、何も考えるな。

あたしは右の方に躰を向けると、眠るために目を閉じた。