「あ、あの…」

「何?」

「…今日は、本当にすみませんでした」

「もう気にしなくていいよ。

俺は小春ちゃんに“おめでとう”の一言さえ言えればそれでいいんだから。

1日遅れだけど、明日お祝いしてあげるから」

朝比奈さんはテーブルの方に歩み寄ると、ケーキと料理の片付けに取りかかった。

そんな彼の姿から目をそらすと、自分の肩に視線を落とした。

先ほどまで、朝比奈さんの手があたしに触れていた。

彼の手が離れたその瞬間、あたしは名残惜しさを感じた。

もっと置いてくれてもいいのに…と、そんなことを思った。

あたし、何でそんなことを思ったのだろう?

離れて欲しくない、置いてくれてもいいのに…と、何で思ったのだろう?

自分でもどうして思ったのか、よくわからなかった。