Leben〜紫陽花の強い覚悟〜

「はい、俺元々内科医なんですよ」


「内科って…またどうして。

まさか小児科医なんて言わないよね?」


「普通の内科医です。

どうしてって聞かれても…なんていうか。

憧れるじゃないですか、ヘリって」


神の手の次は憧れね。


益々神那ちゃんに嫌われそう。


「じゃあ研修医時代にちょこっとかじっただけ?

それ以外の外科的知識ないの?」


研修医の時は2週間程度それぞれの科を体験し、自分に合ったものを選択する。


「医学書なら読みましたけど」


「あちゃー…」


神那ちゃんの1番苦手なタイプかも。


頭でっかち。


「それじゃダメなんですか?」


「無事卒業出来ると良いね…何年かかっても」


「え?それってどう言う…」


Piiii…。


「ごめんよ、電話だ。

もしもし?

…了解、すぐ行くよ」


「どうかなさったんですか?急変ですか?」


「いや、ヘリが帰って来たよ。

うちで治療するみたいだから見学だけでもどう?」


「ぜひ!」


血を見て倒れさえしてくれなければ良い。


それ以外は何も望まないから。


飲み終わったコーヒーのカップを捨て、処置室へ急ぐ。