Leben〜紫陽花の強い覚悟〜

「水原ちゃん、神那ちゃん居ないから今暇だよね?」


「はい、まぁ…。

暇と言われれば暇ですけど」


「じゃあ、ちょっと僕と付き合わない?

僕も君のことを任されてるしね」


主に面倒を見るのは神那ちゃんだけど、神那ちゃんは教えるタイプの人じゃないからそのフォロー。


僕としても医者の中でも1番話が合うのが神那ちゃんだからね。


より新しいことを学ぼうとする探究心、正確無比な技術、動揺しない冷静さ。


僕の理想とするものを全て持っていた。


「分かりました」


水原ちゃんをあっさり口説いて談話室へと向かう。


談話室はステーションの隣にある医師達が休憩する場所のようなところ。


ここでお昼を食べたりすることもある。


沈黙は好きじゃないから短い距離でも話をする。


「水原ちゃんってERの経験ある?」


愚問かもしれないけど。





【ER】
全ての救急患者を24時間体制で受け入れ、診断及び初期治療を行うシステム。





さっき作ったコーヒーを啜りながら尋ねる。


「ないです」


「え、ないの?」


思っていた答えと違い、マヌケな声が出た。


ヘリに志願する医者はER経験者がほとんどだから、てっきり経験あるのかと思ってた。