Leben〜紫陽花の強い覚悟〜

「器用さってやっぱり必要なんですね。

どこへ行っても」


深い溜め息と共に吐き出す。


「もちろんさ。

外科医は1番にならなきゃ意味がないの。

2番、3番の医者に誰が命預けたいかな?」


「それは確かにそうですけど…。

でも本当に腕だけなんでしょうか?」


腕ではなく純粋に医者の人柄を見る人も居るのではないか。


「うーん…それは患者にもよるけど大概は皆腕じゃない?

手術にはより高い安心感を求める。

1番腕が良いのなら失敗する訳がない、ってね。

僕ら外科医は成功して当たり前、失敗したら恨まれる。

そんな世界なの」


「シビアなんですね…」


改めて知る救命の現状に目を背けたくなる。


「人の命を扱う現場だからね、外科医は特に。

多くの外科医はその失敗を恐れ、重圧に耐えかねて逃げ出す。

青島さんもそうだったように。

その現状を知る者はそうならない為に外科から遠ざかる。

だから常に人手不足って訳さ、外科医や救命はね」


過酷な労働環境に耐え切れず辞めて行く者も少なくない。


ちょっと態度が悪かっただけですぐに訴えられたりもする。


外科とは…救命とはそういう世界なのだ。