腕を組み、遺族を見据えて口を開く。


弱気になったらそこにつけ込まれるだけ。


「医療ミスを疑うなら研究機関に依頼して解剖でもなんでもして調べれば良い。

証拠があってからこういう行動を起こして。

時間のムダづかい」


その患者は末期のガンで手の施しようがなかった。


年齢も考えれば手術も好ましくない。


手術をすれば亡くなるまで目が覚めない可能性があるからである。


だからせめて薬で痛みをとった。


死ぬまでの時間を快適に過ごして貰う為に。


その説明も患者と家族にした筈。


「人殺しの癖に…そんな偉そうなこと言わないでっ」


長い髪を振り乱しヒステリックに声を張り上げる。


「時間ないので」


そう言って踵を返す。


「患者は結果でしかものを見ない。

大事なのは結果じゃなくてその過程なのに」


ポツリと人知れず漏らす神那。


大人というものは皆そう。


結果でしかものを見ない。


こういう遺族が居るから外科医の数が減っている。


そんな言いがかりをつける暇があったら冷静に考えるべき。


慌てて着いて来るフェロー。


「あの、神那先生ってどうしてそんなに冷静で居られるんですか?」


「逆にどうしてあの程度で取り乱せる訳?」


理解出来ない。