Leben〜紫陽花の強い覚悟〜

処置が終わると朝日が差し込んでいた。


「ICUに運んでおいて。

意識が戻って何も問題がなければすぐに転科」


看護師に指示してからステーションへ戻りカルテを書き始める。


「救命って大変なんですね。

あんな時間に急患でしかもオペなんて…」


机に伏せっているフェロー。


全く覇気のない顔。


「今頃気づいたの?」


だから救命を希望する医師が少ない。


「はい。

でも神那先生は平気そうですね。

羨ましいです」


「もう慣れたことだから」


あんな時間に急患なんて日常茶飯事と言っても過言じゃない。


しかも大抵は酔っ払い。


「そうなんですか…俺はもう眠くて眠くて」


眠そうにされるとこっちの気が散る。


これが辛いんだったらさっさと辞めれば良い。


内科医なんて救命の世界では大して役に立たないから。


「オペ室以外のところでのオペってよくあることなんですか?」


「現場ならね。

インプロビゼーションを身につけなければ居る価値がない」


「なんです?それ」


「…即興という意味。

災害現場では機材が不足する、分かるでしょ?

そんな時には近くにあるもので代用し、即興で治療を行うこと。

災害医療、つまりフライトドクターには必須の技術」


「必須ですか…。

あ、それより救命の内科医って居ないんですか?

居たら話聞いてみたいんですけど」


「ここには居ないし必要ない。

別の病院には数は少ないけど存在する」


出来上がったカルテを読み返しながら返事をする。