「じゃあ着いて来てね」


「はいっ」


病室へ向かう途中の廊下で、患者さんやその家族の方に話しかけられ結構時間がかかってしまった。


そしてようやく水原ちゃんを連れて来たのは救命の一般病棟。


4人部屋になっている部屋。


コンコン。


ドアをノックをしてから開ける。


「お邪魔するよ〜」


「あ、失礼します」


窓側の奥にあるベッドのところで脚を止める。


「入っても良いかな?」


カーテンで仕切られた内側に声をかけた。


もし着替え中だったりしたら大変だからね。


「どうぞ」


カーテンの向こうから、まだ大人の女性になりきれていない幼さの混じった声が聞こえた。


「じゃ、開けるね」


ベッドを囲むカーテンをシャッと開けると…。


「久しぶりだね、瑠璃ちゃん。

ちょっと良いかな?」


ベッドに付属の机をセットし、中高生ぐらいの女の子が分厚い本を読んでいた。


左手には点滴が繋がれている。


「良いよ」


瑠璃、と呼ばれた女の子が頷いた。


「新しく来た水原先生だよ」


「あ、水原紫音です。

よろしくね」


そう言って右手を差し出す。


「…先生、今日まだオペしてないの?

それとも内科医?」


その手を握り返しながら口を開いた瑠璃ちゃん。


「え?どうして分かるの?」


「だって消毒液の匂いもしないし指に糸の跡も残ってないから」


糸の跡?


あぁ、縫合の時糸を結ぶことで出来ちゃうあの跡ね。


「うん、俺内科医なんだ」


「瑠璃ちゃんの担当医は神那ちゃんだけど一緒に担当してね?」


「え?はい」