一方、神崎達は…。


「どう?

ここ、初めて来たでしょ」


屋上に来ていた。


「…はい」


「水原ちゃん、ちゃんとトリアージ出来たの?」


「え?」


「冷静にあの場を見て患者を選んだのか、って聞いてるんだけどな」


怒気を孕んだような、いつもより低い神崎先生の声。


「いえ…その…俺、は…」


怒鳴られるよりも迫力があって怖い。


「タグで言えば両方共赤だったよね。

女性の方を優先させた理由って何?」


俺の目を真っ直ぐ見つめる鋭い目。


「だって…彼女は俺らと一緒に働いている仲間で…。

男の方は…殺人犯ですから…」


「だから?」


「はい?」


「殺人犯。

たったそれだけの理由で患者を選んだの?」


トゲを含んだような声に変わった。


「そうですけど…」


「…水原ちゃん、ちょっとごめんよ」


「え?」


ガッと胸ぐらを掴まれた。