「1回しか言わないからよく聞いて。

あの場でどちらを選んでも間違い、けどどちらを選んでも正しい。

医者の間違いっていうのは “ 自分の判断に自信が持てない ” 時。

医者が謝るべき時は “ 患者の為にならないことをした時 ” のみ。



水原が現状に満足するのも、しないのも自由。

だけど決して迷わないで。

立ち止まらないで。

立ち止まったらそこから動くのは厳しいし、振り落とされるだけだから」


シレッと名前を呼んだ。


「はい」


凛とした目が神那を見つめた。


「あ、それより名前…」


「気のせいじゃない?」


「えぇー…そんなぁ」


情けない顔。


「神那先生、俺もう弱音吐きません。

分からないなんて言いません。

けど俺は何も出来ないです。

これからはもっと死ぬ気で勉強します。

だから…俺に医者のいろはを教えてください。

フライトドクターも、救命医も。

全てものにしてみせますから」


深々と頭を下げた。


「私は教えない」


「そんな…」


「だから…見て覚えて。

目で見て私の技術を盗めば良い」


「っはい!」


流された、な。