あれからしばらく、処置も無事に終わり一息つける状態になった。


机に身体を伏せ、まだ小刻みに震えているフェロー。


「あれが現場。

君がどれだけ甘い考えをしてたか分かった?」


「…はい。

凄く暑かったです。

身体が熱くて熱くて、でもそれもすぐに冷たくなって…。

怖かったです…」


私もこんな素直に弱音が吐けたらどんなに楽になるだろうか。


「確かにあそこは暑い。

戦場だよ、あそこは。

けどだからといって逃げる訳にはいかないの。

患者を前にして取り乱してはいけない。


君は最低だよ。


自分を守ろうとして患者から逃げた、目を背けた。

何もしようとはしなかった」


「何も言い返せません…」


「1つだけ言う。

今後この仕事を続けるのなら、今日のような場面が幾度となく訪れる。


失敗は許されない。


たった1度のミスが医者を傷つけ、潰すから。

その覚悟はある?

どんな逆境の中でも挫けず立ち向かって行く、執念にも似たそんな覚悟が」