Leben〜紫陽花の強い覚悟〜

と、そこへ…。


「あの、神那先生。

どうして分かったんですか?突き落とされたって…」


新たに談話室に入って来る者が1人。


「怪我の仕方を見れば大抵は分かる。

上から落ちたというのに損傷は頭部と腹部だけ。

頭部は落下の時、腹部は明らかなる暴力の傷。

落下したのにどこも庇わずに無防備に落ちるなんてバカはいない。

それは落下する以前に意識がなかったか、なんらかの事情で防ぐことが不可能だったかということを意味する。

それだけあれば充分分かる」


ソファーに座りながら淡々と告げる神那。


「そういうことなの」


「でも…わずかなことからそんなに分かるなんてやっぱり神那先生は凄いですね!」


飲みものも飲まず、立ったまま話す紫音。


「別に、これぐらい普通。

むしろ出来て当然」


救命に居るなら、ね。


「あの、救命って現在何人居るんですか?

俺まだ全員に挨拶出来てなくて…」


「4人だよ、医師は」


「4人ですか。

じゃあ神那先生と神崎先生と、青島部長…。

あと1人ですね」


指折り数えて行く。


青島…?


「残念。それならあと2人だよ、水原ちゃん」


「え?」


「青島は救命じゃない」


「違うんですか?どうして?」


「あの人は救命から…患者から逃げた。

それだけ言えば分かるでしょ」


医者としてあるまじき行為。

患者に背を向けることなんて…。