ここはとある街中。
何のことはない、普通の街並み。絶えない人々の会話、絶えない雑音。
民はいつもの日々を、いつものように、平凡に過ごしていた。
何も変わらない。
そう、唯一を除いては。

カツカツと、ブーツのヒールを踏み鳴らす音。
煩い程の雑音に包まれている筈の街並み、しかしそれは、静かに、涼やかに、凛と響き渡った。

時間さえ止まったような気がした。しん、と、人々の会話が途絶え、雑音が静まる。

人々は誰もが皆口を閉ざし、食い入るように一点を見つめている。その数多の視線の辿り行く先には、一人の少女が居た。