教室に戻った私の存在に香奈が早くも気付いた。
「つづたんどこ行ってたの〜?」
「保健室、ちょっと体調悪くて。」
「大丈夫?あと一時間あるよ。」
「もう大丈夫、ありがとう。」
保健室があるおかげで、言い訳がしやすい。香奈は深く考えない性格だから、秋がすぐ終わっていくことなんかどうでも良さそうだし、普段保健室なんか行かない私を疑うこともしない。
「ねぇつづ、何かあったでしょ?」
勘だけは鋭いんだけどね。
「何にもないよ。」
「嘘だぁ、隠さないでよ。つづ好きな人できた?」
「え?」
「お、図星〜?なんかね、前よりいい顔してるの。だれだれ?」
「香奈だよ。」
「それは前からでしょう!」
でも、私とは正反対のところにいる香奈が本当に好き。香奈と出会わなければ一生ぬいぐるみを可愛いと思うことはなかったと思う。
香奈に飛田くんの話をしたらどんな反応をするんだろう。この教室に響き渡る声で驚くことは分かるけど、私に何て言うんだろう。それが気になると、香奈に話してみたくなった。
「今日の放課後空いてる?」

