「お腹いっぱい〜。食欲の秋だから食べ過ぎちゃう。」
お腹に手を当て、満足そうに香奈が言う。
「香奈はいつもよく食べるでしょ。」
「ママのお弁当美味しいんだもん。あっ、ねぇつづ、今日香奈も図書室行きたい。」
「え、台風くるの?」
「そんなに珍しくないもん!」
誰かと来るのは久しぶり。なんだかいつもの図書室じゃないみたいに思えた。
「ねぇ見て!かっこいい子いる!」
いつもの香奈で安心してしまう。仕方なく見た先には知ってる顔が居た。飛田くんだ。そういえば本を読んでる姿を初めて見た。あの日一緒に金木犀を見た彼とは別人みたいな横顔。
「連絡先知りたいな〜。」
「やめなよ、一年生だよ。」
「何で知ってるの?」
「・・・知らない、予想。」
「なにそれ〜。」
そのまま流れたから良かったけど、危なかった。別に隠すほどの関係じゃないのに、香奈には話したくないと思った。
ううん、多分誰にも。

