「鼓名は本当に図書室が好きだな。」

いきなり隣に座られるのも嫌いだけど、いきなり呼び捨てにされることはもっと嫌い。

「ねぇ、飛田くん何年生?」

「一年だけど。」

意外。同じ学年じゃないことは分かってたけど、見た目が大人っぽいから二年生かと思ってた。

「先輩には”さん付け”しましょうね。」

「つーか鼓名この本、俺この間読んだばっか。オチはね〜」

会って二日目の人間をここまで嫌いになったことは、今まであっただろうか。飛田くんは何か言ってるけど、私の耳が聞くことを嫌がってる。

「なんで秋の写真撮りたいの?」

この台詞を除いて。

「なんでもいいでしょ。」

「俺知ってるよ、金木犀あるとこ。でも理由教えてくれないんじゃこっちも教えれないな〜。」

なんだか楽しそうにしてるけど、自分で探すから放っておいて欲しい。それが正直な感想だった。私の気持ちを察せない彼は話を続ける。

「まぁいいや。今日の放課後また団地来いよ。俺もう教室戻るわ。なぁ、死んでも来い。」

死んでも行かない。それにしても、お調子者の彼が本を読むことが私には信じられなかった。しかもこの本。私が定期的に読みたくなるやつ。やっと返却されたと思ったら、あいつが借りてたんだ。