昼休みまでの時間をこんなに長く感じたことは初めてだ。図書室の扉の前で、ためらうことも初めてだ。
「・・・いない。」
そういえばクラスも知らないし、家も団地のどこかは知らない。私たちは常にここでしか会うことが出来ない。なのに、会いたい時にあいつは居なかった。
それから毎日図書室に通うのに、どこにも居ない。私に気を遣ってもう来ないようにしてると思うのが自然だけど、飛田くんの居ない二週間はあの真っ赤なもみじさえ、色がなくなったように見えた。
その時、カウンターで借りた本を返却してる後ろ姿。一瞬スローモーションになった、飛田くんの後ろ姿。振り返った彼は私には気付くと少しだけ笑いながら、もう泣いてしまいそうな私に近付いてきた。

