「はぁ〜……っ…良かったねぇ…!!」

「本当だよねぇ、泣けたね、号泣だよ」

「『君の名は。』最高〜っだね!」









「瀧くんみたいな人と入れ替わってみたいなぁ……」

うっとりした表情の、美雪。

「みつはになりたいよ!」

「真面目にそれだ!」









「ポップコーン、残っちゃったね。」

「美雪がダブルなんか頼むから…」

「麻衣子が全然食べないから…」


「……あれ?!私のせい?!美雪?!私が食べなかったせいなのか?!」


「そうだよぉー……」


泣きべそをかく美雪。
嘘でしょ。私なのか。


「ごめんってぇ、食べる食べる
ヤバイくらい食べる……」

「急がないと次の映画始まるぅぅ……」

「うるさいよ!次の映画タダで見れる?!それはそれでいいなぁ!」

「麻衣子ぉ、多分犯罪……」




ポップコーンを大量に食べる私を、
ぽーっと眺めてるのは美雪。

黒髪。胸くらいまであるサラサラツヤツヤストレートヘアをなびかせて歩いてる、
ほっぺは薄く色付いて、
黒目がくりっとしてて、
肌が白くて透き通って、
背が小さいのに顔が小さくて、

いわゆる……美少女。




「あー!麻衣子、食べ終わった!すごい!」

「食べさせたのは美雪だよ……」



にこにこした顔で手を叩く美雪。
可愛いなぁもう。








あれ、なんか耳が急に、痛……














キィィーーーー……ン




「え……」



耳鳴り、し始めた。



『…子……衣子……麻衣子___…』






私の、名前……聞こえる……
誰?美雪?

目の前には心配した顔の美雪。



違う……美雪じゃない





『お願い…………思い……して…麻衣子……
麻衣子…っ……………あの夢……』





痛い、痛いよ……
誰?頭が痛い、耳鳴りがひどい

誰なの?夢?なんのこと……





その時。





急に目の前が滑り台に変わった。






パイプの形をした、
黄色い滑り台。

静電気がよく起こる、あの、滑り台。




あ……




「夢って……これの事、かぁ……」












「麻衣子?麻衣子?」




現実世界に戻された私は、
また泣きそうな美雪の顔の目の前に。



「あ、あああ、ごめん、美雪、」

「いいよぉ……大丈夫?」


「うん、大丈夫なんだけど、美雪ぃ、」



「んん?なぁに??」

「昔見てた夢 無い?」

「えー?」









「映画見て 思い出したの…



ずっと見てた夢



あと少しで終わりそうな滑り台



滑ってた、私……」