逃げ込んだトイレの鏡の前で、両手でバシっと自分の両頬をたたく。
「ッツ、」

薬用リップを塗って、前髪をとかしていたら、トイレのドアが開いて北岡さんが入ってきた。

目と目があって、軽く会釈。ぎこちない、気まずい空気が流れる。
トイレに入ってきた北岡さんは、鏡の前に立って色付きリップをだし、慣れた手つきで唇に塗る。ツヤツヤの唇の完成。それから、チラっと私を鏡越しに見る。

「アオイ先輩と同じクラスなんですね」
「あ・・うん」
「昨日、アオイ先輩が部活で言ってました。『つまんねークラスだ』って。そうなんですか?」
「そ、そんなことないよっ。みんな仲良しだし・・」
「ああ、お友達ごっこ、ですね」
「え?」
「べつに。じゃ」
北岡さんは、先にトイレを出て行った。

なんなの!
なんなの!
宣戦布告としか、思えないんですけどっ!ってか。宣戦布告されるほど、私はアオイと近い距離にいないのに。はぁ~自分で言ってて悲しくなるよ。