「ありがとうございます!彼と付き合うことになったんです!」

お弁当を食べ終えた後、告白されたらしい。放課後に本拠地に来て報告してくれた。
本拠地は階段の下のバケツ置き場だ。ここで作戦を練ったりする。

「よかったな」

「これ、お礼です!」

約束の報酬をもらう。手作りのクッキーだ。依頼人が去った後、袋を開けてクッキーを食べる。私の好きなしっとりしたクッキーだった。
残りは家で食べよう。クッキーをカバンの中にいれる。

「あの……」

「なんだ?」

ここに来たということは依頼しに来たということだろう。長い黒髪で背の高い女子が立っている。

「別れさせてほしいの。高宮君と泉を……」

高宮と泉という人物は知らないので依頼人に聞く。
高宮はサッカー部のレギュラーで、最近マネージャーの泉と付き合い始めたらしい。泉は依頼人の恋愛相談に乗っていたが、裏切って高宮に告白した。

「今思えば怪しかったわ……プレゼントを何にするか相談した時も、すでに持っている物だったり一番欲しいものじゃなかったり……そう言う時に限ってあの子は一番欲しい物をあげたのよ……」

この学校は、恋愛相談が命取りになる。ライバルを落とすために相談に乗ったり、中には相談で手に入れた情報を売って金を手に入れる者もいる。

「わかった、引き受けよう。だが、一つ条件がある。絶対に、私の正体を言うなよ」

依頼人はパッと笑顔に変わり、頷いた。
一度、正体がばらされたこともあったが、運よく別の大きな事件が起きて消えていった。ばらした依頼人には制裁を加え、それ以降私が影飛脚だとは言われなくなった。

困るんだよ。正体がばれたら対抗策が作られやすくなるじゃないか。

私を商売敵だと認識した奴らや、依頼人と敵対している人物は影飛脚への対抗策を考える。
このやりかたは気に入っているので、使えなくなるのは避けたい。