涼夏のこと心配しつつも、涼夏と会う日がきた。

部屋で支度しながら、そばで兄の頼太(らいた)が新聞を読んでいた。

「珠利、今日はすずちゃんと会うんだろ」

「うん。遅くなるから冷蔵庫にあるものを適当に食べてて」

家事は兄妹で分担している。

「わかった」

頼太は新聞をたたんでタバコを吸いはじめた。

「なあ、珠利。今でも真実くんと続いてるのか?」

しんみりした口調で聞く。

「お兄ちゃん、説教?真実のことをどうこう言うのはやめてほしいって言ったでしょ」

珠利に言葉を突き返され、これ以上何も言えなかった。


そして、時間が迫ったので家を出ることにした。

「行ってきます」

ミュールを履いてドアを閉めた。

夕方の渋谷はさすがに混雑している。

待ち合わせ場所は渋谷の109の前。

早足で向かう。

そして、すでに待ち合わせ場所には涼夏が待っていた。

「すずちゃん、お待たせ」

とりあえず、二人はバーで飲むことにした。

珠利は何から話そうかと考えた。

珠利はチャイナブルーを一口飲んで口を開いた。

「実はね、この間すずちゃんのお父さんから電話があった」

「そう」

そっけない態度でカルーアミルクを飲む。


「何があったかわからないけど、早く仲直りしたら?」

涼夏は首を縦に振らない。

話し合うがらちがあかない状態だ。

やはり親子の問題に他人が入るのは難しいことかもしれないと珠利は思った。

そして仕事についての話題になった。

吉原はいろんな事情を抱えた人たちがいる。

自分には無縁の世界だと思いながら、珠利は聞いていた。

そんな涼夏も今や事情を抱えた泡姫のひとりなのだ。