珠利はだからって、目の前で抱きつくことないのに…と思った。

生で見せられるのが一番ショックだった。

サユの気持ちを理解しつつもさっきの光景は見たくなかった。

珠利はさっきの一件を見てしまい、真実は店であんな状態なんだろうかと良からぬことを考えだした。

そんなこと考えてるうちに『はしもとや』名物カレーが出てきた。

「珠利さん、気を取り直して、カレーでも食べてください」

雨音も珠利をなだめようとした。

珠利は気を取り直してカレーを食べることにした。

だけど、さっきのことで真実とぎくしゃくしてしまい、カレーがおいしいのかマズいのかすらわからなかった。

「サユさんも甘えたいなら、せめて私の目の届かないところの方がまだよかった」

見ない方がマシだということを主張した。

生で見るのとそうでないのでは全然違うと言いたいようだった。

「珠利。いいかげん機嫌直してよ」

真実は頼んだ。

「真実がホストクラブでピアノを弾いてるだけならこんなに機嫌は悪くなりません!」

ふてくされたままだった。

「これじゃあ、プレイヤーなんてさせられないな」

雨音は笑いながら言った。

「プルイヤー?」

ホスト用語を知らない珠利は何のことかたずねた。

「プレイヤーっていうのは表に出て接客する人をいうのですよ」

雨音は説明した。

「つまり、ホストじゃない!!嫌だ、真実が今よりもお客さんとベタベタするなんて!」

珠利は必死に嫌がった。


「珠利、この後バーにでも行こう」

真実はなだめるように言った。


そして『はしもとや』を後にして、真実は珠利をバーに連れて行った。