｢だけど、ピアニストなんでしょ。なんで、真実があなたたちにサービスしないといけないの｣

イヤミを突き返した。

抱きつかれているのを目の前にして怒りが頂点に達した。

珠利の恐い表情にどん引きして、サユたち去っていった。


珠利も真実の腕にしがみついてるはずが、明らか真実に触れることなく歩いてる。

少し気まずいムードが流れていた。

珠利の頭の中は良からぬ妄想で埋め尽くされていた。


そして『はしもとや』に行くと

｢命やないか｣

関西人ホストのマサトがカウンターでビーフストロガノフを食べていた。

マサトはさっき真実に抱きついてきたキャバ嬢・サユが本指名している。

ホストになる前は滋賀の工場で働いていた。

ホストドラマを見て単純に夜の王になりたいと思い、上京してホストになった。

｢マサト、来てたんだ｣

｢ここのカレーめっちゃうまいし。といっても今日は他のもん食ったけど｣

そして、真実はマサトの隣に座り、珠利は真実の隣に座った。

｢もしかして、彼女？｣

マサトは珠利を見て言う。

｢はじめまして…｣

珠利は自己紹介をした。

｢はじめまして俺、ラブストーリーでホストやってるマサトといいます｣

軽く会釈して挨拶した。

デートなのに機嫌があまりよくない珠利を見て、マサトは不思議に思った。

「なんや、命。デートやのにあんまり楽しそうやないで」

そして、真実がさっきのサユのことを説明した。

すると、マサトが苦い表情で

｢珠利さん、すみません。俺が担当してるお客さんのために気分を害させて｣

珠利に謝った。

｢そんな、謝らないでください｣

客がしたことなのに、たとえ担当といえどもマサトが謝るのは気の毒に思えた。

そして、マサトは話続け、

｢実はサユとは…さっきのお客さんとはケンカしていたのがですが命には相談役になってもらってたんです…。｣

サユがたまにヘルプしてくれる真実に甘えたがっていることを話した。