勇さんは私の声に気がついて
こちらに視線を向けると
一瞬目を丸くしながら
私を見た。
「………塾の帰り?」
「はい、そうです!」
勇さんはそう尋ねると
私の答えを聞いて
「へぇ。」と短く答えて
それからお店の暖簾を取り、
チラッと 要くんに視線を投げる。
「あ、こんばんわ。
北澤の塾の友達の飯島要です。」
「……どーも、進藤です。」
要くんの挨拶に
いつものように短く挨拶を返す勇さん。
しかし
勇さんの機嫌はどこか悪そうで
声色が いつもより少し冷たかった。
「塾おつかれ。
じゃあ、気をつけて帰れよ。」
「あ……勇さんも、お疲れ様です…。」
そして、勇さんはそう言うと
さっさと中に入って行ってしまい
いともあっさりと 別れてしまった。
いつもならもう少し話してくれるのに…
やっぱり今日は
機嫌が悪いのだろうか、と
私は思いながら
思わず少しだけ 落ち込んでしまう。
そんな私を見て
要くんが優しく肩に手を置いた。
「今日きっと忙しかったんだよ。
いつもより疲れてるとかじゃないかな。」
「……そうだね、ありがとう要くん。」
私は要くんにそう言って
あはは、とぎこちなく笑顔を返す。
そしてもう少し進んだ先で
要くんと別れて
手を振ってから 家まで歩いた。

