「え、要と…北澤さん?」
「お前らって、仲良かったっけ?」
同じ授業によく出ている他校生が
要くんに向かってそう尋ねる。
私はそんな周りの反応に納得しながら
エレベーターを降りて、
要くんと少し距離を開けた。
(これまでちゃんとこんな風に話したの
今日ぐらいしか無かったもんなぁ…。)
その前に遊園地で会ったけど…
あの時話しかけられたのも
自分でもビックリしたし。
「うん。途中で会って今一緒に来たんだ。」
「へぇ……何か話してるとこそんなに見ないから驚いたわ。」
「出てきた時仲良さそうに笑ってたから付き合ってるのかと思ったよー。」
(───え。)
私は
そう言った他校の女子高生の言葉に
少しだけギョッとした。
あんな一瞬のことで
そんな風に思われちゃうのか……。
そんな風に思っている私の横で
要くんは笑顔でそれを否定する。
「あはは、付き合ってないよ。」
「びっくりした〜。
要に彼女出来たら俺泣いちゃう。」
要くんの言葉に
そう返して嘆くような素振りを見せる他校の男子高生。
私は皆の会話に笑顔だけ浮かべて何も言わず、そのまま席に着いた。
(皆 高校違うのに仲良くしててすごいなぁ…。)
塾で友達が出来ている状況に
私はそんな風に感心しながら
皆に囲まれている要くんをチラッと見る。
きっと要くんくらいフレンドリーだったら
私は今よりもっと
勇さんに近づけたんじゃないかなぁなんて
彼を見ながら
そんなことを思った。

