「詳しくはまた近くなってからな。
悪いな、遅くまで残らせて。」
「いえ、全然…!
よくこの時間まで残ってますし。」
「はは、確かに。」
───ドキッ
勇さんが声を出して笑った様子に
思わず 不意に心臓を高鳴らせる。
たまに出る勇さんのこういう笑顔が…
私は、すごく好き。
勇さんは笑ってから
静かにカウンターの椅子を降りて
私に視線を向け、もう帰るぞ という合図を送ってくる。
私はそれに従って
椅子から降り、勇さんの後を追った。
「店長さん さようなら。」
「おう、じゃーな柑奈ちゃん!
ちゃんと送ってけよ勇ー!」
「うっす。お疲れ様っした。」
勇さんと店長に挨拶をして
いつものように 家まで一緒に歩き出す。
私がよくお店に行くせいもあって
もうこうして2人で帰るのは
日課のようなものになっていた。
いつもいつも
送ってもらって申し訳ないとは思いながらも、
一緒にいれる時間が増えることが嬉しくて
ついつい、甘えてしまう。
思う存分───勇さんの隣を独占できる時間だから。
「……花火大会の日さ」
「!」
「浴衣、着てこいよ。」
歩きながら
不意に勇さんが私にそう言う。
そういえば、先ほど勇さんも浴衣を着ると言ってたことを思い出し
勇さんの言葉に納得して
私はコクッと頷いた。
まぁ、どっちにしても着ていくつもりではいたけどね。
(……早く花火大会の日にならないかなぁ…。)
私はそんなことを考えながら
勇さんと夜道を歩いて
いつものように 2人で喋って家に帰った。

