「花火大会になんて誘えないよ…っ!」
「何で?遊園地は誘えたじゃん。」
「だ、だってあれは
カナからもらったからって口実に言えたんだもん……。」
でも花火大会は
そんな口実は作れない。
それに花火大会なんて
カップルでしか
男女で行ったりしない気がするし…っ。
(付き合ってもないのに誘うなんて
それだけで告白してるような気もするし……っ。)
そんな大胆なこと
自分で出来る気がしない。
「もうー、本当にビビりだなぁ。」
「うっ…。」
「でも夏休み入っちゃう前に
何かしらやっておきたいよねぇ、あと1つくらい。」
カナがそう言った言葉に
私はハッとして
現実的に この先のことを考える。
受験生の夏……
塾の夏期講習とか勉強合宿で
きっと遊べる日はほとんどない。
会えたとしても
塾帰りにラーメン屋さんへ
閉店ギリギリに顔を出す時くらいになる。
(…そうじゃん私……私受験生じゃん!!)
もう
勇さんとこんな風に遊べる時期は
今年はもう……今だけ…!?
(そうとなればもう何としてでも
勇さんを花火大会に誘わなくちゃ---!!)
『今年の夏はもうこんな時くらいしか遊びに行けないので……。』
なんていうのを口実に誘えば
多分優しい勇さんなら
哀れみの気持ちとか妹への優しさとかで
一緒に……行ってくれる気がする。
(……それで断られたら潔く諦めよう…。)
当たって砕けろ作戦で
私は勇さんに提案してみようと
その日の帰り道、ラーメン屋さんに寄った。

