「っ………。」
触れた指先の感覚に
思わず 息を飲む。
そして
ついに、来る────
って
そう……思ったんだけど
「…ん、もう良いぞ。」
「……え?」
そう言った途端
また車体がグラッと揺れて、
私はゆっくり目を開けると
勇さんはもともと座っていた位置に
すでに座り直していた。
「……え……あ、あの……?」
「睫毛。目元に付いてた。」
もう取れたから、と
勇さんはそう私に言うと
先ほどと同じように 外の景色に目を向ける。
私はその言葉を聞いて
一瞬ポカンとするものの
次の瞬間───
火が出るんじゃないかというほどの熱を
一気に顔に集めた。
─────本日2度目の、勘違い。
(うわぁぁぁあーーー!!?!)
ですよね!そうですよね!!
そんなこと起きるわけがない!
勇さんが私に……まさかまさか!!
なのに、なのに私ってば……
一体どんな顔して目閉じちゃってんの?!
(うわぁ恥ずかしい!!
やだ!もう泣きたい!忘れてほしい!!)
いやぁぁぁあ!!!と
1人恥ずかしさに悶絶する。
私は顔を押さえながら
顔を伏せて
勇さんに今の顔を見られないよう
必死に隠した。
「………。」
そんな私の向こうで
こちらに横顔を向けながらも
ほんのり赤くなった頬と
口元を隠すように
顔に片手を当てていた勇さんの姿に
私はまたも
気づくことはなかった───。

