(…あ………。)
キラキラと光る『そこ』を見上げて
私は心の中で思わず声を漏らす。
「……綺麗ですね……観覧車…。」
「………。」
思わずそう呟くと
勇さんは私の隣に立ちながら
一緒に黙って そこを眺めた。
そして
「……どうせなら、全制覇してぇよな。」
「…え?」
不意に 勇さんはそう呟くと
突っ立っている私の腕を
グイッ──、と引っ張って
そのまま観覧車の方へとぐいぐい歩いていく。
私はその行動に驚いて
思わず勇さんを呼び止めた。
「え、勇さん!乗るつもりですか!?」
「だから歩いてんだろ。」
「でも、もう閉園時間が…!」
「まだ20分ある。」
それだけあれば余裕だろ、と
勇さんは私にそう返して
そのまま観覧車の方へと 私を引っ張り続ける。
もう周りは遊園地の出口に向かって歩く人たちばかりで
私たちはそれに逆らうようにして
その場所へと 歩き進んでいく。

