「…いや、別に柑奈に怒ってねぇよ。」
「え……じゃあどうして…。」
あんなにテンションが下がったんですか、と私が尋ねると
勇さんは何だか言いにくそうに
「それは…。」と口籠り、
それから私の方へ
チラッと、視線を向ける。
「……何か一瞬腹痛くなっただけ。」
「え、大丈夫ですか?!
ごめんなさい、私がグラタンあげすぎたのかも…っ!」
どこかで少し休みますか?と
私が尋ねると
勇さんはすぐにそれを断って
私の肩をポンッと叩いた。
それは、勇さんにとっての「ありがとう」の表現。
「別にもう何ともねェから。…だからほら、早く行くぞ。」
「あ……はい!」
勇さんは私に小さく笑みを向けると
今まで通りの雰囲気に戻り
そのまま歩き始める。
私は勇さんのところへ足早に駆け寄って
さっきと同じように 隣を歩き出した。
(良かった……勇さん怒ってなかったみたいで…。)
私はそう内心安堵しながら
機嫌の治った勇さんの隣で
小さく笑みを浮かべながら 彼を見上げていた。

