「……っ……はぁ、はぁ…!」










───私は走って、近くの公園の中に入り






それから彼に見つからないように
逃げ込むようにして



中のベンチに、座り込んだ。











「っ、はぁ、はぁ……っ…。」











切れる息を一生懸命落ち着かせて

顔を両手で覆う。









…久しぶりに、
こんなに走ったかもしれない。






ヒールで無理して走ったから

尚更、ない体力を消耗していた。









私は顔から手を離して
自分の口から出る白い息を

静かに見上げながら





先ほど見えた

人混みの先にいた彼の姿を───思い出す。









(………逃げて、きちゃった……っ。)









本当にずっと、私を待っていた彼。





会いたいと思っていたその彼を
とうとう見つけたのに






私はこうして……逃げてきてしまった。










(──────っ。)










───怖かった。






やっぱりどうしても、勇気が出なくて



直前で怖気づいて
逃げてきてしまったのだ。









……終わらせるために行ったのに





私は……私は……っ…













(……勇さんを……諦められない……っ。)












そう思う自分の気持ちに




私はとうとう気づいてしまった。









途端にどんどん気持ちは溢れて




終わらせたくないと

好きでいたいと───思ってしまったのだ。









(っ……こんな気持ちで、会えない…。)









会ったらきっと、言ってしまう。





言わないままサヨナラを言うつもりだったのに

これじゃ………っ…










私はそう思って


再び、自分の顔を
両手で静かに覆った───。