「……ただな、勇。」

「はい。」









店長は俺に何か言いたいことがあるようで


暖簾を店の奥から取り出しながら
俺に告げる。









「…後悔だけはすんなよ。
人ってのは、言葉にしねぇと伝んねぇもんだからな。」

「……はい。」









俺のことを安じてくれている店長の気持ちが伝わってきて

俺はそれに小さく頷いて
そう 返事をした。








……俺も、もう後悔はしたくない。









(……言わずに別れるより、言って振られた方が吹っ切れる。)








それを俺はこの1年で
苦しむほどに痛感してきた。




だからもう……迷うことは何もない。










(………あの餓鬼に…)










───柑奈を、簡単に渡したくない。









俺はそう強く思いながら

仕事を再開させた───。










▲勇side END▲