そうして
俺も結局家に戻るために
道を引き返して
俺は煙草を吸いながら
すっかり暗くなった道を
1人で歩く。
マフラーをしても足りない位に寒い
この時期。
去年と同じように
自分の白い息を眺めながら
俺は静かに 吸っていた煙草を
短くならないうちに、落として消した。
………目の前に見える白が
自分の吐いた息なのか
煙草の白い煙なのか、よく分からない。
その目の前の白を静かに見つめながら
俺は目の前からやってきた
『それ』に 視線を移した。
「………こんばんわ、進藤さん。」
「………。」
俺にそう言って 声をかけてきたのは
────あの日以来久しぶりに会った
あの柑奈の『友達』だった。
相変わらずの顔で
俺のことを真っ直ぐ見ながら
どこか機嫌が良さそうに
薄く笑みを浮かべている。
─────こいつは、やっぱり苦手だ。
「………要、だっけ。」
「そうです。覚えてたんですね。」
俺の名前忘れられてると思ってました、と
要は俺に言いながら
笑みを止めない。
……何となく 嫌な予感がする。
そんなふうに思いながら
俺は静かに こいつのことを見据えていた。
……今度は何の用だ。

