「………っ。」
「ずっと前から好きだった。
でも北澤にはあの人がいたし、別に実らなくても想ってるだけでいいって思ってた。」
───でも、と
要くんは続けて
私を抱きしめる腕の力を込める。
「でも、北澤がそうやって辛そうにしてるの…俺は見過ごしておけない。」
「………要くん…。」
「忘れるために利用してくれて良いよ。
…だからそんな辛い恋、やめちゃえ。」
もう『あの時』みたいな北澤
見たくないんだ───。
そう言った要くんの声が
少し震えてるのに、すごく優しくて。
何だか聞いている私も
涙が出てくる。
私は涙を流さないように
必死に上を向きながら 鼻をすすった。
そして直に…要くんが私から離れる。
「……返事は今はいいから。
北澤の好きな時に、俺に言って。」
「………ありがとう、要くん…。」
「いーよ全然。
…はは、北澤また泣きそうだね。」
「っ……そんなこと…ないし…。」
「あはは、はいはい。」
要くんは私から離れると
私の顔を覗き込んで
いつもの優しい笑みを浮かべた。
そして私をからかいながら
くすくすと笑う。
「……帰ろっか。
冬は、すぐ暗くなっちゃうから。」
「………うん。」
そしてそう言い
要くんは私の手を取って
自分のしていた手袋を 私につける。
そのまま要くんは先ほどと同じように
先に歩き始めて
あとからついてくる私に 歩幅を合わせた。
「手袋ありがとう。
でも要くんの手、寒いでしょ?」
「俺はいーよ。さっきからずっと温めてたから。」
十分温まってる、と
要くんは小さな嘘をつきながら
私に優しく笑いかけた。
───要くんは優しい。
私は彼に「ありがとう」と言って
手袋を付けたまま、コートのポットに手を入れる。

