(……でも)
───考えてみたらわかることだ。
こんな同時に2人を見かけるなんて
理由は1つしかない───。
「……会いました。すぐそこで。
…お2人はこれからデートですか?」
「……せやで。
何や、そんなことまで知っとったん?
それとも進藤君が言ったん?」
私の言葉にあっさり工程を示す愛理さん。
そしてこんなことを尋ねてきて
私はそれまで逸らしていた視線を上げて
愛理さんを見た。
(………っ…。)
自信に満ちた表情が そこにはあって。
私はズキッと痛む胸を隠しながら
無理に、小さく口角を上げた。
「いえ……
知り合いの方が…そんなことを話していたので。」
「そうなんや。
あ、何か呼び止めてしまってごめんね。
これからどっか行く途中やったやろ。」
「大丈夫ですよ。」
無理に笑っている私に
気づいているかいないのか…
愛理さんは余裕の笑みを浮かべたまま
私にそう言って
軽く会釈をしてから
私の横を通り過ぎて行った。
───後ろで響くヒールの音が
体まで…響いている感じがする。

